高旗山の子午線標

  • 2019年3月2日
  • 福島県高旗山子午線標(第115号)

はじめに

GPS測量が主流となる以前は天文測量が行われていました。天文測量とはある時刻での天体の天球上での高度角、時角、方位を観測することによってその観測地点の経度、緯度、方位角を求める測量です。天文測量でその位置を決定した地点は天測点と呼ばれます。

我が国ではGPSが登場する遥か以前の昭和29年(1954年)からの5年間に三角測量を規正する目的で全国で天文測量が行われました。この際に全国48箇所の一等三角点付近に天測点が48基設置されたそうです。また天測点には測量の基準となる方角を決定するため”子午線標”と呼ばれるものが数km離れた真北または真南に設置されています。

天測点はコンクリート製の四角柱または八角柱で頂部には機材を設置する目印となる鋲が打ち込まれています。対になる子午線標も同様にコンクリート製の石柱です。

天測点が設置されてから70年近くが経過していますが全国で40基以上が今もなお現存しているそうです。天測点は一等三角点の近くにあるため比較的容易に見つける事が出来ます。反対に子午線標は平地にあることも多く見つけることが難しいようです。しかしながら地理測量関係者や有志の人々によって調査が行われていて多くの天測点と子午線標の位置や写真が公開されています。

今回、福島唯一の天測点である高旗山天測点の子午線標を探してきましたのでここに紹介します。少しでもみなさんの参考になれば幸いです。

高旗山にある天測点

高旗山の山頂には一等三角点が設置されています。
その近くの山頂の隅にぽつんと天測点が残されています。三角点を気にかける登山者人は多いかもしれませんが天測点に興味を持つ人は少ないのでしょう。特に案内板が設置されることも無く立っています。高旗山は会津と中通り分ける山脈上にあって風の通り道であることから天測点は厳しい風雪に70年近く晒されています。しかしながら柱の原型を留め銘板の文字も明瞭に判別することができます。かなりの重量物であった測量機器(子午儀)の基礎として使用するため非常に頑丈に作られていることが分かります。

登山は片道約1時間で比較的初心者向けの山です。
熊が出没する地域なので熊鈴や携帯ラジオなど熊対策が必要です。
高旗山登山の記録はこちらです。

山頂は平坦で南側の隅に天測点が設置されている。 高旗山に設置された四角柱の天測点である。 銘板には第十五号と刻まれている。 高旗山には一等三角点が設置されている。

高旗山の子午線標を探して

高旗山から真南方向約7.8kmに子午線標が設置されています。高旗山の天測点と子午線標の位置関係は下記の地図の通りです。上部の赤丸が天測点で下部の赤丸が子午線標になります。直線を引くと正確に真南に設置されていることがわかります。

高旗山の子午線標は真南方向約7.8kmに存在する。

子午線標は須賀川市長沼にあります。
郡山南ICから県道29号長沼喜久田線を通り県立長沼高校を目印に南下します。長沼高校前を通り過ぎると林道入口の標識があります。ここが入口です。

県道29号線から林道入口の分岐点である。

郡山方面から見た林道入口の状況です。

戸渡藤沼線は藤沼ダムに至る林道である。 林道は1.5車線の舗装道路である。

1.5車線舗装道路。待避所も多いので通行は容易です。

しばらく進むと大規模な太陽光発電所が見えてくる。

数軒の民家の間を抜けて500mほど進むと大規模な太陽光発電所があります。ソーラーパネルを右手に見ながら先へ進んでいきます。

右手に待避所の標識が見えてくる。

しばらく進み、大きく左カーブする手前に目印の待避所標識があります。写真は県道側から撮影した状況です。待避所は少し離れたところにあります。

待避所は標識より少し先にある。

藤沼ダム側から撮影した状況です。

この標識から山に入る。

この標識の場所から山に入ります。踏み跡はあるようなないような不明瞭な状況です。冬なので雑草が無く歩きやすい。さて子午線標は「すぐ右に坂を上がって、ゆるやかな上りを直進し、ピークと思われる場所から左に曲がり50mほどの位置」にあります。道が無いのでニュアンスを感じていただければと思います。この雑木林で遭難することはないと思います。ただ、等高線が狭くなっているような場所に入っていくのは誤りだし危険なのでそれだけ注意してください。

子午線標へ至るルートは雑木林だ。 子午線標へ至るルートに踏み跡が無い。 子午線標へ至るルートは松の木が多い。 境界杭が目印になるかもしれない。

ところどころに境界杭や国土調査杭があります。この杭を辿っていくルートなので参考にしてみるのもありだと思います。

子午線標の発見

雑木林を10分ほど歩き地図の等高線でそれらしい場所に辿り着きました。冬だから雑草も無く視界良好なので辺りを見回してみます。すると・・・

周囲を見回すと明らかな人造物を発見した。 これが高旗山の子午線標なのか!?

これが高旗山の子午線標です。

高旗山の子午線標の正面を撮影した写真。 高旗山の子午線標の右側面を撮影した写真。 高旗山の子午線標の背面を撮影した写真。 高旗山の子午線標の左側面を撮影した写真。 高旗山の子午線標の頂部を撮影した写真。 高旗山の子午線標の銘板を撮影した写真。 高旗山の子午線標の看板を撮影した写真。

同時期に作られた天測点よりもコンクリートの亀裂が少なく剥落もほとんどありません。良好な状態で残されています。銘板もしっかり判読可能です。設置者の地理調査所は国土地理院の前身となる組織です。旧陸軍参謀本部陸地測量部が解体されて1945年に発足し1960年に現在の国土地理院に改称されました。手書きで「第115号」と刻まれています。天測点は第15号なので子午線標も第15号という気もしますが正解はどちらなのでしょうか?頂部には測量機器を固定したと思われる金具もしっかり残っていました。大きさは高さ約130cm、一辺の長さ約30cmの四角柱です。

参考資料

緯度経度情報

  • 緯度: 北緯37度18分14.321秒
  • 経度: 東経140度12分15.696秒
  • UTMポイント: 54SVG29482889
  • 標高: 425m

GPSトラック

駐車場所から子午線標までをGPSで記録したトラックです。
GPS精度にばらつきがあるため多少の誤差があります。

KML形式座標データ(sigosenhyou.zip, 1.35KB)
ガーミンのルート作成等にお使い下さい。
※GPSログを変換したものなのであくまで目安です。